通信制高校を選ぶ時 ~地方の実状~

こちらは、11月に行われた通信制高校選択に関する交流会の報告後半です。

この件について、まとめるのに時間がかかりました。それは、地方と都市圏の事情をシンプルに分けるのは難しかったことと、地方の実状を想像は出来ても実際の切実さをイメージしきれず、 置いてきぼり感を生むような文章になってしまったりしていたからです。

そこに気付いて、スタッフ間(首都圏・地方両方の在住者あり)でこれまで見聞きしたことを洗い出し、考察を交わし合いました。それでも、どこまで事情に寄り添えているのかわかりませんし、周知の方もいらっしゃると思いますが、私たちなりの考察を記しておきたいと思います。

選択肢の数

まず書いておきたいのは、一般的に「地方」と言われる地域で、通信制高校を探す時、ある程度限られた選択肢から選ぶ(選ばざるをえない)場合もあるということです。

都市圏では、主要な駅の周りに複数のサポート校があったりして、「あれ?ここって何だろう?」と目に入ったり、友達の友達のお子さんが通信制に行っていると聞いてつないでもらったりということも比較的増えてきていると思います。けれども、地方においてはそういう部分の薄さがあり、通信制高校について知る機会や自然と目や耳に入って来る情報がより限られているように感じました。

交通の便も密ではなく車送迎が必要だったり、地域によってはサポート校やサテライト校までも遠くて特急や新幹線利用が必要だったりするようです。

通信制は毎日通学必須ではないので、スクーリングや週1・2日の登校ならばと気持ちを切り替えてやりくりされるご家庭もありますが、実質的な負担が生じます。そして、調整可能な範囲は子ども個人や家庭によって違います。

都市圏であっても、候補に挙がる学校がそこまで多くないエリアもありますが、地方の場合は、選択肢の分母が少ないところに地理や気候の事情なども加わって 調整すべきことが増え、結果的にオンラインで履修できるシステムの学校を選ぶ方も増えているように感じます。

オンラインの学校の利便性はかなり門戸を拡げてくれましたが、今回の交流でも、高校生活を楽しみたい、対面で仲間や先生と学び合いたいと思っているお子さん、できれば通って高校生活を経験して欲しいと感じている保護者もおられることを感じました。そのような想いを持っている場合、選択肢が少ないエリアであったがゆえにその願いが先送りされるのは残念です。

スクーリングについては、そこへの参加が進級に関わるため、子どもや親が大きなプレッシャーを感じてしまうこともあるようです。この点については、心理的な事情も加わっていると思われそのことについて次の章で書きたいと思います。

*交通費について:通信制高校であっても通学定期の対象となりますが、サポート校への通学は対象外のようです。この点については、各学校に問い合わせて見られるのが一番確実です。

選択に至るまでのさまざまな調整

不登校状態のお子さんが高校進学を考える段階で、家庭が常に考慮しているのが子どもの許容範囲や進学への関心の度合いだと思います。

年齢を考えてもまだまだ未経験なことも多く、新しい場所や人との関わりに対して緊張感が高かったり、過敏さを持ちあわせるお子さんもいます。学習面で嫌な経験をしたことから、学習に向かうのに大きな努力を要するお子さんもいらっしゃいます。

11月の交流会でも、子どもにどう伝えるのか、子どもの意思をどう確認していったらよいのかという関わり方を知りたいという声があり、 保護者は子どもに提供する情報量や伝え方・タイミングを調整し、それを辛抱強く続けていることを感じました。

そこに、期限のプレッシャーが加わり、地域によっては、更に交通費のやりくりや選択肢が少ない中で選ぶという事情も加わります。気持ちの面でも調整が必要な場合は、考慮すべき点が増えることの負担がより大きく響くのだろうと気付かされました。(交流会の中では、進学のタイミングを半年や一年伸ばす家庭があることも話されました)

最近は、「通信制」といいつつも通い方やプログラムが多様化しており、確実に選択の幅は広がってはいますが、子どもの意思表示や許容範囲は成長過程ゆえの不安定さもあり、学校のサポート範囲や仕組み理解に親も不慣れです。そして、双方のフレキシビリティにバラツキがあったりする。このように不確実要素の多いことも選択を難しくしていると思いました。

周りの人ができること

このような実状を知ったうえで周りは何ができるでしょうか。私たちも考えてみました。

まず、早めに情報を得る機会があること。そして、中学卒業後の学び方・暮らし方について、考えたり対話する時間や場所があることではないでしょうか。

これまで関わってきたご家庭をみていると、子どもへの情報提示から少しずつ具体化していくにつれ、子ども自身の不安が薄れたり、割り切って許容できることが増えていくのを感じています。

何をすれば良いのか、それがどの程度のものなのかわかっていくからなのでしょう。保護者も、早めに知っておくことで意見調整や費用面の準備などに時間のゆとりを持って臨めます。その過程で迷った時も、忖度なく情報交換の出来る仲間や経験談を聴く機会などでちょっとしたヒントがもらえて風穴が空くこともあると感じます。

ただ、そのように書きつつも、小まめに情報収集したり、気持ち・お金・時間など複数の事情を加味しながらシュミレーションを繰り返す家庭の担う部分が大きいことは無視できません。

気になる方も多いスクーリングについて、コロナ禍で許容されたやり方が今後も認められて移動の負担が減ったり、スクーリング参加や登校にあたって必要な配慮を一緒に考えていただける学校が増えるなど、仕組みの面での変化にも期待したいです。

もうひとつの選択肢

そして、ここまでは情報が得にくいことや子どものデリケートな面を強調してきましたが、親が情報通であったり、子どもが学習・コミュニケーション・部活などに意欲的であっても、地理的事情や通信制が通信制であるがゆえに実現できないことがあり、合わないと感じて、高卒認定に切り替えるお子さんもいらっしゃいます。

それなら全日制に行けばよいと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実際そういう経験をした方々の話を聞いていると、出席日数や内申点というものなしに挑むには、また別のチャレンジや覚悟、何かしらの妥協が必要なことを感じています。ただ、高校からは全日制の高校に進学されるお子さんも少なくないので、始めからそこを除いて考える必要はないと思います。

ここまで書いてきて何度も頭に浮かぶのは、不登校かそうでないかということで目を向ける方向が変わってしまうことへの違和感です。不登校だったから通信制高校…という流れではなく、本人の学び方や暮らし方に合う場所を探したら通信制高校だった、そのようになっていかないものでしょうか。

これだけ不登校が増え、行政も対応もして来ているのだから要因もわかってきていると思います。もし、それが噛み合わないならば、当事者の声をとことん聴いてともに考える場があってもよさそうです。

今後はますます、 学校や学習に固執せずに本当に子どもにとって必要な力とは何かを考えること、そしてどのような学び方をしたとしても、そのお子さんそのご家庭の選択が尊重され、その先の機会が守られてゆくことが大切でしょう。

不安を煽ってしまっているといけないので、お伝えしておくと、通信制高校であっても高卒認定であっても、それ自体で区別されるようなことはあってはならないですし、そこから大学・専門学校・就職へと道をつなげている先輩は多くいらっしゃいます。(基本的には、学歴にも「通信制」と書く必要はありません)

公立の通信制高校について少し

公立の通信制高校について少し触れておきます。

これらについては、レポートの提出が紙ベースで取り組みにくいこと、建物が学校っぽいために足を踏み入れにくいこと、学校(県)の方向転換があったため今後の様子をみていきたい、といった話も出ました。

地域によっては、登校時間が朝・昼・夕三段階になっていたり、出席日数が足りなくても全日制高校受験可能なところもあります。これらは、通信制ではなく定時制であったり、人数や試験の点数などに制約があったりするので、居住している県の教育委員会ホームページを確認したり、わからなければ電話して聞いてみると良いと思います。

最後に

さまざまな理由により、学校との関わり方を選んできた子ども達が、また新たな学校と向き合う高校選択は、期待も不安も伴い、子どもにとっては大きな決断だろうと感じます。

支える保護者の方々にとっては手探りのことも多いと思いますが、その時間がお子さんが自分なりのルートを見つけるために必要な時間となってゆきますように。成長真っ只中の彼らが、高校選択を通じて良き出会いに恵まれることを心より願っています。

今年一年、関心を寄せてくださった皆さま、「学び環境コーディネーション」に興味を持って、サポートブックや著書にご掲載くださった方々にも心より感謝申し上げます。

学び環境コーディネーションは、勉強面だけではなく生活面も、進学だけでなくキャリアの意識も持ちながら、家庭に任されがちな調整部分に寄り添いながら子どもに合う道を創ってゆけたらと名付けたものです。

来年も、家庭が感じる違和感と丁寧に向き合いながらコーディネーションを実行してゆきたいです。

皆さま、どうぞ良い年末年始をお過ごしください。

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